【ブックレビュー】『水中の哲学者たち』誰でも哲学できるんだと感じさせてくれる本

ブックレビュー

『水中の哲学者たち』永井玲衣[著]晶文社

どんな本ですか?

ひとつのテーマについて皆でいっしょに深く考え、聴きあう『哲学対話』。
哲学研究者にして、哲学対話のファシリテーターである著者が、哲学のおもしろさ不思議さ、そして、問うこと考えることの大切さを伝える哲学エッセイ。

哲学するって、こういうことか!

哲学に興味があって、哲学の本を読むけど、でもやっぱりなんだかよくわからない、という人も多いのでは?
わたしもその一人。その理由は、哲学を“学問”として見てしまい、むずかしいと感じてしまうから。
でも本書は、日常の中に哲学が平行してある感じがして、すごく身近。“学問”っぽくない。
普段の生活の中で、「なんで?」とちょっと立ち止まって考える、そういうところから『哲学』が始まるんだ、と、本書はやわらかく伝えてくれます。

哲学対話とは?

『哲学対話』って、ご存知でしょうか?

哲学対話とは簡単に言えば、哲学的なテーマについて、ひとと一緒にじっくり考え、聴きあうというものだ。普段当たり前だと思っていることを改めて問い直し、じりじり考えて話してみたり、ひとの考えを聴いてびっくりしたりする。

『水中の哲学者たち』永井玲衣[著]晶文社 17ページ

こういうことを、小学校、中学校、高校の授業の一環だったり、社会人のグループだったり、いろんなコミュニティで行われているのだと、本書を読んで初めて知りました。
著者は、その『哲学対話』のファシリテーター。ファシリテーターってなんだ?👇

ファシリテーターとは、会議や議論の際に、グループがより協力し、共通の目的を理解し、目的達成のための計画立案を支援する人のことである。ファシリテーターは議論の中で、参加者の様々な意見や考えを公平に扱い、特定の側に立つことはなく、また、自身がイメージする意図や落とし所に参加者たちを誘導しないよう、2つの意味で中立の立場を保つ。
ウィキペディアより

本書では、著者が参加してきた、いろんな『哲学対話』の様子が書かれているのですが、これがとても興味深い。
例えば、ある企業で「はたらくのはなぜか?」という問いを、みんなで話していく場面では、一人の女性が話しながら、ボロボロと泣き始めたり…。
例えば、小学生たちが「人はなんのために生きているのか?」というテーマで話し合う場面では、ハッとするようなするどい意見が出てきたり…。
そんな風に、『哲学対話』の中での印象的なシーンに出会った著者も、自身の内面に潜って、深く深く考えていく…。
一つの問いが、一人一人の心と頭を刺激して、今まで気がつかなかった領域まで深めていく過程が面白かったです。

もし小学生のときに、こんな『哲学対話』の授業があったら、よかったのにな、と感じました。
この授業を受けた子どもは悩み事ができたとき、きっとまず『考える』ことを選ぶのではないか?
ただ茫然と悩むのではなく、考える人になれる。
これは、すごく強い武器を常備しているのと、同じですぞ。

考えることをあきらめない

本書の中にあった、ある高校生の発言が印象的でした。それは、
「そういうものだ、って言われるのがすっごくいや」というもの。
それに対しての著者の反応もまた印象的でした👇

(略)彼女は「先生にわからないこと聞いたら『考えすぎるともっとわからなくなるよ』『そのうちつらくなるよ』って言われた」と眉間に皺を寄せた。
 ああ、それは本当に腹が立って、くやしくて、絶望しただろうな、と思う。

『水中の哲学者たち』永井玲衣[著]晶文社 68ページ

もし、年下の子から何か問われたら、わたしも『考えるとしんどいよ』って、言ってしまうかも💦
大人だからって、訳知り顔で「人生こうだから」みたいな“逃げの答え”を安易にしてはいけないし、気軽な返答が、実は若者たちの未来に水を差しているのかもしれないと、気づかせてくれてました。
もう十分に大人だけど、知らないことだらけです。
だから、考えること、問うことを、あきらめないで生きていこう、と、本書を読んで思いました。

おわり

以上が『水中の哲学者たち』のブックレビューでした。
哲学を仕事にするって、どんな感じなのか知りたい人、これから哲学を学ぼうと思っている人に、特におすすめしたい本だと思いました。

わたし
わたし

最後までお読みいただき、ありがとうございました!

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