【ブックレビュー】『断髪女中』近年再評価されている獅子文六の短編集、読んでみた

ブックレビュー

『断髪女中 獅子文六短篇集 モダンガール篇』獅子文六[著]山崎まどか[編]ちくま文庫

本の大まかな内容と感想

1930年代~1960年代まで、小説家として大活躍し、近年再評価を集めている獅子文六(ししぶんろく)の短篇集。
表題の『断髪女中』ほか、いろんなタイプの女中が出てくる作品たちや、夫婦のおかしなやりとりが楽しい作品などなど。
時代は古くても、コミカルで明るいから、全然古臭くない。さらに、現代の女性の状況を予期しているようなキャラクターの登場に、著者の柔軟な発想、着眼点に好感を抱きました。

獅子文六って、どんな人?

近年再注目されている獅子文六って、どんな人かというと👇

・1893年(明治26年)生まれ。小説家、演出家。
・演劇関連の仕事をしていたが、生活が立ち行かなくなり、小説を書くようになる。
★そのときに、「四×四=十六」をもじって、獅子文六という筆名をつけた。
・久保田万太郎、岸田国士らと文学座を創立。(「文学座」と名付けたのも獅子)
・新聞の連載小説(『悦ちゃん』)を執筆したり、映画化された作品も多数、NHKの朝の連続テレビ小説の第一作目の原作(『娘と私』)になったりと、大活躍した。
(すべて、ウィキペディアより)

これだけの活躍をしていると、“流行”というイメージになってしまったのか、獅子文六作品は、ほぼ絶版という時期がありました。
本書の編者である、文筆家、翻訳家の山崎まどかさんは、その頃、古書店や古本市で獅子文六作の本を血まなこになって探していたそうです。

きっと、そういう人たちがたくさんいたのでしょう。
2013年にちくま文庫から出版された『コーヒーと恋愛』を皮切りに、『悦ちゃん』『娘と私』など続々と刊行されることになりました。

わたし自身は、山崎まどかさんの本で、初めて獅子文六さんの存在を知り、がぜん興味がわきました。
絶版のままだったら、獅子文六作品を想像することしかできませんでしたが、今は気軽に購入し、読むことができる(しかも文庫本で!)なんて、ラッキーとしかいいようがないです!
「読みたい」と声をあげてくれた読書家の方々に感謝です🙏✨

わたし
わたし

ちくま文庫さんは、他にも『あしたから出版社』とか『年収90万円でハッピーライフ』とか、いいとこついてる本をよく出版してくれるので、本当にありがたい😂

モダンガール篇とモダンボーイ篇があります

短篇集である本書、山崎まどかさんが選定した『断髪女中』は、文芸評論家の千野帽子さんが選定した『ロボッチイヌ』とともに発売されました。
獅子文六全集の中から、女性が活躍する作品を中心に選んだのが本書が『モダンガール篇』で、男性が主人公の作品をセレクトした『ロボッチイヌ』が『モダンボーイ篇』になります。

わたし
わたし

読み比べてみるのも、楽しそうですね!!

ふんわりした気持ちになる、不思議な読後感

表題である『断髪女中』から始まる本書。
「女中」がメインの作品だから、昔の暮らしの中で起こる物語を味わうことができるのかな?と予想しながら読み始めたのですが、いい意味で、気持ちよく裏切られました。

≪『断髪女中』あらすじ≫
ある家庭で、「女中を雇いたい」と意地になって探していた奥さん。ようやく見つけたのが、断髪(ショートボブ)の女中だった。そんな髪型をしている女中なんて奇妙なので断りたかったが、背に腹は代えられぬと、しぶしぶ雇い入れる……

『断髪女中』の初出は1938年(昭和13年)で、第二次世界大戦が開戦する前の年です。
この頃の日本は、軍国主義に向かっていたから、空気感としては、きっと重苦しかったり殺伐としていたのではないか、と想像します。

でも、獅子文六の小説は、そんな想像を払拭してしまう魅力を持っていました。
夫婦の会話はコミカルでテンポがいいし、ムキになって女中を探す奥さんはかわいらしいし、お高く留まってないから、断髪の女中に対する反応も素直で好感がもてる。
そして、読み終わったら、物語で感じたユーモアにふんわりと包まれて、不思議な心地よさを味わえました。

ある部分では、この時代ならではの「女性が男より下」的な表現をしているところは多々あるのですが、物語として俯瞰(ふかん)したときに、けして「女性が下」ではないと感じるし、書き手の獅子文六は「女性が下」とは思っていないことが伝わってくるのです。
なぜそう思うかというと、物語の中に、女性の自立や働き方について、幸せに生きるとはどういうことか、というテーマがしっかり描かれているから。
それが、獅子文六作品の魅力の大きな理由かな、と感じました。

続く、『おいらん女中』『見物女中』『竹とマロニエ』も女中の話なのですが、不思議で心地よい読後感を変わらず味わえました。

わたし
わたし

個人的に、『おいらん女中』『竹とマロニエ』が好きでした。

他にも、『写真』という作品は、巻末の解説で山崎まどかさんも書かれていましたが、今でいう推し活の話です。
明治生まれの女性が推しを全力で応援する……今のわたしたちとなんら変わらない姿で、完全に共感してしまいました。

獅子文六が描くキャラクターは、今のわたしたちが悩んでいることや、答えが見つかっていないことや、日々の暮らし方などなどが、とても近い。

獅子文六が描き出す世界観は👇
・当時の人たちには、最先端の考えに新鮮さを感じた

・令和を生きるわたしたちにとっては、普遍的な魅力があり、逆に新鮮に感じる

そういうことすべてが、時代が変わっても、たくさんの人々を惹きつける獅子文六作品の力だなと思いました。

おわりに

以上が『断髪女中』のブックレビューでした。

文庫本なので、気軽に手に取って、このふんわりとした心地よさに包まれてみてはいかがでしょうか。

わたし
わたし

最後までお読みいただき、ありがとうございました!

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