【ブックレビュー】『常識のない喫茶店』接客業やジェンダー問題にも希望を感じた本

ブックレビュー

『常識のない喫茶店』僕のマリ[著]柏書房

本の大まかな内容

その小さな喫茶店は、世間の常識など通用しない。
不快なことや許せない行為をする客は出禁にしてOKだ。
客が店を選ぶように、店だって客を選ぶ。喫茶店として「いい空間」を作るため。

喫茶店の店員として、ブレない心を持ち続けながら働く日々をつづった、唯一無二のエッセイ。

最初の一行で、面白い本確定!

表紙のイラストや、タイトルに惹かれ、手に取りましたが、出だしの一行を読んで、完全に心をつかまれました。

ある日、嫌いだった常連の訃報を聞いたとき爆笑した。わたしにはそういうところがある。

『常識のない喫茶店』僕のマリ[著]柏書房 7ページ

このはっきりとした物言いに、接客業経験者のわたしは、「面白い本確定!」と叫びたくなりました。
喫茶店という、常連が生まれやすい業種だと、嫌な客とも何回も顔を合わし、やりとりしなくてはいけないから、出だしの一行のようなことを思ってしまうこともあるだろうな、と想像できます。
客という立場しか知らない人は、👆の出だしの一行を読んで、「なんて店員だ!」と立腹するかもしれません。
でも、店員の立場になって、自分が嫌いな客に毎日接客しているシーンを思い描いてみれば、👆の出だしの一行も理解できると思います。

本書では、嫌なお客のことがたくさん書かれています。「え? そんなことする奴いるの?」とびっくりするようなエピソード満載でした。
とはいえ、そんなすごく迷惑な客に対しても、「常識」なら、作り笑顔で対応しなければならないところですが、著者が働いている喫茶店では、「もう来ないでください」と出禁にできる!
なぜか? それは、大切にしていることが明確だから。

「働いている人が嫌な気持ちになる人はお客様ではない」という理念が、この店を支えてきた。お金を払っているから何をしても許されると思っている人は絶対に来ないでほしい。

『常識のない喫茶店』僕のマリ[著]柏書房 10~11ページ

👆接客業をしている人が一度はやってやりたいと思っていても、なかなかできないことを、ちゃんと態度で示している著者やこのお店の他のスタッフの方々、そして、そういう土壌を作ったマスター、本当にすごい。
わたしもかつて、理不尽なことに頭をさげたことがあるので、この本を読んで、このマスターみたいな人に出会いたかった~と、思いました。

店員に必要なスキルは「やさしさ」と「思いやり」 

上👆で、「マスターみたいな人に出会いたかった~」と書きましたが、たとえ、出会えて、お店で働きたいと希望したとしても、採用されるには、難関を突破しなければなりません。
この喫茶店の面接は、すごく独特です👇

🔹面接時間2~3時間
🔹マスターが重要視していること⇒「やさしさ」と「思いやり」その他は割とどうでもいい

と、すごく変わっています。
著者は自身が面接を受けたときのことをこう書いています👇

どういう気持ちでお店をやっているのか、どんな人を雇いたいか。マスターは熱弁を奮います。(略)「やさしい人しか雇わない」「お客様にも、従業員にも、業者の方にも思いやりを忘れてはならない」「働いている人に失礼な態度をとる人はお客様ではない」という理念に心から賛同したのです。

『常識のない喫茶店』僕のマリ[著]柏書房 168ページ

「店員が迷惑な客を出禁にしていい店」と聞くと、店員のわがままがまかり通っている店なのか、と誤解してしまいそうですが、面接時の店長の言葉を知るだけでも、まったくそうじゃないとわかります。
お客様だけじゃなく、従業員にも、業者の方にも思いやりを持って接していれば、そこは絶対にいい空間になるし、そこを乱してくるお客が来たら、その空間に集う大切な人たちを守るために、「もう来ないでください」と言ってしまえる。むしろ、そう言うことの方が「常識」だと納得できました。

働くこととジェンダー問題に、希望を感じた本

著者は、若い女性なので、いわゆる「気持ち悪い系」の嫌な客のエピソードがたくさんありました。
でも、そんなお客にも「違うことは違う」という対応をとっていて、素晴らしいなと感動しました。
なぜ、著者がそういう毅然とした態度を取ることを選んでいるか。そのことについても、理由がありました👇

「違う」と思うことに自分を曲げ続けていると、気がつかないうちに尊厳を失うことになる。かつてのわたしがそうだった。

『常識のない喫茶店』僕のマリ[著]柏書房 11ページ

著者は、今の職に就く前の仕事についても、くわしく書かれています。仕事だからと、理不尽なことをしてくる客や取引先の人にも、頭をさげたり、我慢をしたりしなければいけないという「常識」の中で苦しみ追いつめられたのです…。でも、著者はこの喫茶店で働くことで大きく進化されました。

このブログを読んでいる人の中にも、著者の過去と同じような状況にいる方がいると思います。そんなあなたに、本書をぜひ読んでいただきたい! きっと、希望を感じられると思います。
そして、働く人たちだけじゃなく、ジェンダー問題にも、一筋の光を与えてくれる本だと感じました!

おわりに

以上が、『常識のない喫茶店』のブックレビューでした。

本書の内容を書いて出版することは、かなり勇気がいることだと思います。リスクを背負ってまで、やり遂げてくれたのは、❝この世の中が少しでもよくなってほしい❞という願いがあるから
いい作家さんに出会えてよかった、と心から思えました。

本書を読んで、わたしも「やさしく」「思いやりのある」人間になるために、日々をていねいに生きていこうと誓いました。

わたし
わたし

最後までお読みいただき、ありがとうございました!

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