【ブックレビュー】『21世紀の世界文学30冊を読む』翻訳家がおすすめする、近代海外文学とは?

本と珈琲とランプブックレビュー

『21世紀の世界文学30冊を読む』都甲幸治[著]新潮社

どんな内容?

『ベンジャミン・バトン 数奇な人生』『勝手に生きろ!』など、人気小説を多数翻訳してきた著者が、21世紀の世界文学の情報を集められるだけ集め、インタビューを読みまくった末に選び抜いた30冊を紹介。その作家についても解説する。

こんな人におすすめ!

🔷海外文学に興味があるが、何を読んだらいいか、わからない人
🔷近代の海外文学について、くわしく知りたい人
🔷翻訳家が書いた本を読みたい人

海外文学のイメージをくつがえされる

海外文学と聞くと、他国の小説家が、自分の国の言葉で、その国の価値観や生き方を書いているというイメージをもつ方も多いのでは?
本書を読めば、その常識はくつがえされます!

今は、「出身国」と「移民した先の国」、そして、「影響を受けたまた別の国の文化」などをミックスした作品を書く作家がたくさんいるというのです。
そして、作品に描かれるのは、自国の戦争や内戦。移民せざるを得なかった、それらのことを物語にのせていくという…。

インターネットやSNSで、ただ見聞きするだけだった戦争や内戦が、移民した作家たちの台頭によって、小説という世界の中で、経験者言葉で伝えていることを本書を読んで知ることができました。

「日本語の外」の世界を見てみませんか?

本書の中で書かれていた、「日本語の外」という言葉が印象的でした。
日本に住んでいると、まわりはだいたい日本人で、日本的なものに囲まれている、という「日本語がすべてだという環境」の人がまだまだ大多数だと思います。
でももう、世界では、そうではなくなってきていて、そして、日本も近い将来、多国籍な人たちとその文化を受け入れていくことになる…。
「日本語の外」という言葉から、わたしはそういうことを感じました。

日本語がすべてだという環境からずれていく運動 = 世界文学への試みと定義させてもらいたい

👆と、著者は書いています。

日本語がすべてだという環境からずれる、ということは、多国籍を受け入れていくことに実際に進んで行くということ。「日本語がすべて」の世界しか知らないわたしのような人間にはかなりハードルが高い運動です💦
そんな人たちにとって、本書で紹介されている本は、これからの時代の「参考書」「手引き書」のような存在なのかな、と思いました

わたし
わたし

本書に紹介されている本を読んで、他国のことを知る、ということが、不安を取り除く、一番いい方法だと思います!

こんな作家が紹介されています!

では、どんな作家が紹介されているのでしょうか👇

ジュノ・ディアス
出身国 ドミニカ共和国
移民先 アメリカ ニュージャージー
影響を受けたもの 中南米文学とアメリカ青春小説と日本のオタク文化
書かれている言語 スペイン語まじりの英語
受賞歴 『オスカー・ワオの短く凄まじい人生』全米批評家協会賞、ピューリッツァー賞

ハ・ジン
出身国 中国
移民先 アメリカ
主な作品内容 アメリカに来た中国人家族のいざこざ
言語 英語
受賞歴 『待ち暮らし』全米図書賞

などなど……
いろんな文化や言語、時代背景がミックスされた作品、そして、著者についてのくわしい情報が、30冊分書かれています。

本書には、特別収録として、ジュノ・ディアスの訳し下ろし短編があります!!

章の合間のコラムも面白い!

30の作品と著者を紹介する章の合間に、コラムがあるのですが、それがすごく面白いです。

例えば👇
海外には、どういう文学賞があるのか?
アメリカで、作家を目指すとしたら、どういうルートがあるのか?
アメリカにある「天才助成金」とはどういうものか?

など、知ってそうで知らなかった海外の本まわりの情報が盛りだくさん。

わたし
わたし

本好きさんには、興味津々の情報ばかり!

隣人より、地球の裏側の人たちと通じ合う世界

著者はあとがきでこう書いています👇

翻訳だけをすることに限界を感じていた。(略)ただ完成度の高い訳書を日本で出しても、事情のわかった人しか読んでくれない。

『21世紀の世界文学 30冊を読む』都甲幸治[著]新潮社 241ページ

わたし
わたし

わたしが書店員で文芸書担当だったときも、海外文学の棚はせまかったなぁ…

だから著者は、
読者と海外文学作品との出会いの場を設けなければ…という思いで本書を書いたのだそうです。
特に手にとってほしいのは、日本語がすべての世界で、ものすごく息苦しく感じていたり希望を見いだせない人たちだと👇

僕はそういう人たちに、ほら、地球の裏側でも君に似た人がいて、何かをやり始めているんだよ、ということを伝え続けたい。

『21世紀の世界文学 30冊を読む』都甲幸治[著]新潮社 244ページ
わたし
わたし

本書はただたんに海外文学を紹介する本ではなく、翻訳家という仕事を通して、日本の人たちに熱いエールを送っているんですね!

今まで日本の作家ばかり読んできて、そろそろ幅を広げたいな、という方に、特におすすめしたい一冊です!

わたし
わたし

最後までお読みいただき、ありがとうございました!

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