【ブックレビュー】『砂の女』これぞ小説!夏におすすめの傑作 古典名作!

砂丘のイラストブックレビュー

『砂の女』阿部公房[著]新潮文庫

本の大まかな内容

昆虫採集のために、砂丘に出かけた男は、とある村落の民家に泊めてもらうことになる。
その家は、砂の穴の底にあり、男を出迎えたのは30才前後の女だった。
居心地の悪い夜をなんとか過ごし、翌朝、帰ろうと思ったら、穴に降りるために使ったはしごが、なくなっていた……。

読後、「これぞ小説!」と言ってしまった!

誰もが知っているであろう、名作『砂の女』を初めて読みました。
というか、阿部公房の作品自体、初めてでした💦 感想は……👇

めちゃくちゃ面白かった~!!
なんで今まで読んでこなかったんだ~!!!

でした(笑)
特にラストは、「そういうことか~!!」とうなって、「これぞ小説!」と思わず声を上げていました!!

なぜ今、『砂の女』を読もうと思ったのか、そのきっかけは忘れてしまったのですが、読もうと思った自分をほめてあげたい(笑)。
どういうところがよかったのか、本書のミニ解説と自分なりのグッドポイントを書いていきます👇

『砂の女』って、すごい本だった!

1962年(昭和37年)6月に発行された、書下ろし小説『砂の女』。
発行の2年後1964年の英訳から始まって、チェコ語、フィンランド語、デンマーク語など、20数か国の翻訳が続々と発行されます。

一般の読者になじみのなかった前衛作家、阿部公房は、本書をきっかけに一躍有名になったと、ドナルド・キーンさんによる、巻末の解説に書かれていました。

1962年に、読売文学賞
1967年に、最優秀外国文学賞(英語版)を受賞しています。

わたし
わたし

世界のたくさんの人たちが、この小説を読んだのか、と思うと、世界中の読者と面白さを共有したような嬉しさを感じました✨

ノーベル賞に最も近かった阿部公房

阿部公房は、1993年 (平成5年) 1月に、急性心不全で亡くなっています。享年68歳。
死後に未完の長編作品が見つかったり、最期まで精力的に執筆されていました。

ノーベル文学賞を選考するスウェーデン・アカデミーのノーベル委員会のペール・ベストベリー委員長は、2012年3月21日、読売新聞の取材に応えて、「(安部公房は)急死しなければ、ノーベル文学賞を受けていたでしょう。非常に、非常に近かった」と述べている。

『阿部公房』ウィキペディアより
わたし
わたし

『非常に』を2回くり返しているあたりがリアルですね……

ノーベル賞を受賞してほしかったとは思いますが、阿部公房が素晴らしい作家で、多くの傑作を世に送り出してくれたことは変わりありません。
これからもたくさんの読者が、阿部公房の本を堪能し、楽しんでいくと思うと、なんだかワクワクしてしまいます!

わたし
わたし

わたしも、『砂の女』以外の本を読み漁ろうと、思ってます!

映画化もされています

砂の女』は、1964年に映画化されています。(脚本を阿部公房が担当しています)

女の役を演じているのは、なんと、岸田今日子さん!!
これは、ぴったりすぎる配役ですね!!

はたして脱出できるのか? というハラハラ感がたまらない

男は、穴から脱出しようと、ありとあらゆる手段を使って、実行します。でも、これがなかなかうまくいかない……。
その描写が手に汗にぎります。

男の立場になって考えてみれば、確かに、砂に囲まれたボロボロの家と、砂かきをしなければ、配給品をもらえないというシステム、そして、そんな暮らしを受け入れている女との2人だけの時間など……
そりゃ、逃げ出したくもなるよ、と肩入れしたくなります。

でも、この男、ちょっと鼻につくんです。

砂穴に来るまでの人生は、教師の仕事をし、結婚して妻もいましたが、ほぼ誰とも信頼関係を築けていない。基本的に人を見下しているのです。
そんな男が、砂穴から出られたとして、どうなる? 幸せに暮らしていける? また元の文句ばっかり言っている日常に戻るだけでは?
など、読者はいろいろと考えて、シンプルに男を応援するというスタンスも取れない……。

物語の構造はとてもシンプルなのに、ハラハラドキドキもさせ、なおかつ読者に考えさせる複雑さも含んでいる

こういう魅力をもつ小説だからこそ、名作と呼ばれ、読み継がれているんですね!

比喩表現、人物描写が素晴らしい

小説の中では、たくさんの比喩表現が出てくるのですが、それがすごく面白いです。
巻末の解説で、ドナルド・キーンさんもこう書いています👇

もう一つ忘れてはいけないことは安部氏の文体である。文体の一番の特徴は、比喩の豊富さと正確さであろう。別の次元で、二つの観点から振り返ってみると、あらゆる現象の本質が分かってくる。

『砂の女』阿部公房[著]新潮文庫 276ページ

たとえば、こんな比喩表現👇

女の苦痛が、電線でつないだように、そのままこちらに伝わってくる。

『砂の女』阿部公房[著]新潮文庫 135ページ

空になったやかんは、紙細工のように軽かった。

『砂の女』阿部公房[著]新潮文庫 135ページ

シンプルだけど、すんと頭に入ってくる比喩ですね✨

そして、人物描写もリアルで素晴らしかったです。
個人的に、一番すげー!!と思った箇所は、砂穴の中で、水の配給を止められて、のどの渇きに苦しむ描写です。
男は、水を求めて、家の周りを探し回ります。そして「水のにおいがする」と、水がめに向かいます……👇

男はいきなり、水甕(みずがめ)の底から、しめった砂をつかんで、口いっぱいにほおばった。吐き気がこみあげてきた。体を折って、胃をひくつかせる。黄色い胃液と、涙が、あふれ出してきた。

『砂の女』阿部公房[著]新潮文庫 161ページ ㊟カッコ内のふりがなはブログ主が書き入れました

この水を欲する表現の強烈さ……想像しようと思う前に、頭の中で勝手に男を再生してしまうくらいのインパクトがありました。
圧倒されました。

わたし
わたし

👆この部分は、特に、夏に読むと、臨場感増し増しです🥵

おわりに

本書『砂の女』は、60年前に発行された小説ですが、今読んでも、まったく古くなく、読みやすいです。
まだ読んだことがないという方は、ぜひ読んでみてください。
本当に「これぞ小説!」と、ひざを叩いてしまうはず!!

巻末の解説で、ドナルド・キーンさんもこう書かれています👇

『砂の女』は安部氏の創造力によるフィクションである。(略)同時に、日本いや世界の真相を最も小説的な方法によって描いている。われら二十世紀の人間が誇るべき小説の一つである。

『砂の女』阿部公房[著]新潮文庫 276ページ
わたし
わたし

最後までお読みいただき、ありがとうございます!

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