【ブックレビュー】『現代生活独習ノート』ストレス解消してくれるものは、身近にあると教えてくれる

白旗を挙げる女性ブックレビュー

『現代生活独習ノート』津村記久子[著]講談社

本の大まかな内容と感想

入社希望の学生のSNSチェックという業務のせいで、情報におぼれ、思考停止になってしまった主人公が、なぜかローカルテレビ番組にドハマりする話、
娘を連れて出戻った主人公が、折り合いが悪い母親との冷蔵庫の場所争いでストレスがたまりまくる話、
住んでいる区が毎年発行している『現代生活手帖』という通販カタログのような冊子から、自分のために一杯のお茶を淹れてくれる機械を買うどうかで迷いに迷い、なかなか買えない話、などなど。

この短編集は、仕事や家族などから発せられる、小さなストレスが積み重なり、疲れ果ててしまった人たちが主人公。
読めば、誰しもきっと、主人公たちのつらさに、自分と共通するものを感じ取ってしまうはず……。

でも、つらいだけではもちろんなくて、著者の津村さんならではの、ユーモアと優しいまなざしがあり、読後感はさわやか。
苦しんでいた主人公たちが、ゆっくりと、牛歩のようなスピードで回復の糸口を見つけていく姿に、こちらもゆっくり癒されて、心が軽くなりました。

兼業作家だったからこそ書ける、会社員のリアル 

本書の著者、津村記久子さんは、2009年 に 「ポトスライムの舟」で第140回芥川賞を受賞された作家さん

2005年に「マンイーター」(単行本化の際『君は永遠にそいつらより若い』に改題)で第21回太宰治賞を受賞し、小説家デビューして以来、2012年まで会社員をしながらの兼業作家をされていました。

わたし
わたし

兼業時代に芥川賞を受賞されているって、めちゃくちゃすごい!!

そんな著者ですから、働く人を書かせたら、天下一品なのですよ✨
会社員って、毎日同じルーティンの中で生きている場合が多いから、小さなストレスが発生すると、それがどんどん積み重なってしまいますよね……。
そして、気づいたら、どっぷりとストレスの沼につかっていて、抜け出せない……なんてことも💦
本書の短編の中にも、ストレスで疲れ果てている会社員の物語が多いのですが、その描写が絶妙。本当にリアルです。
だから、読んでいて、つい、

「わかるわ……」

と、つぶやいてしまいます。
会社員以外にも、母親との関係や、友達との関係に、つらさを感じている主人公たちも、描かれています。どの作品も、共感度高いです

かといって、全然暗くない、逆に笑える

わたしが、津村さんの小説やエッセイが好きなのは、その絶妙なリアル感とともに、シンプルに笑えるところも多いから。

例えば、本書の中の一編『粗食インスタグラム』という作品では👇

内容⇒判断をすることが多い業務のせいで、その他では判断することを避けていたら、自分が食べたいものがわからなくなってしまった主人公が、夕食の写真をSNSでアップしてみることに……

というようなお話なのですが、その夕食の内容が本当に粗食でひどい(笑)
【クラッカーと水】とか、昼間におしゃれなチーズケーキを食べたのに、それは投稿しないで、【インスタントのフォー】を投稿するとか🍜

そんな主人公の行動を読んでいると、「何やってんの」とツッコんだり、「夕食か?それ」と笑ってしまったりします。
でも、そうなってしまう背景がちゃんとあると読者はわかっているので、「そうやんね、そうなるよね……」という気持ちになってしまうのです。

そういう魅力が、津村さんの本にはあるな~と、本書を読んで、改めて感じました。

タイトルの意味

すべて読み終えて、本書の『現代生活独習ノート』というタイトルを改めて眺めてみたら、その意味がわかったような気がしました。
特に、『独習』という文字に注目して、

『一人一人がそれぞれにいろんな経験して、そのつらさを少しずつ乗り越えていこう』

という意味なのかな? と。
読後に感じるさわやかな気持ちは、こういうテーマみたいなものを受け取っているからかな、と思いました!

津村記久子さんをまだ読んだことがないという方にも、読んだことがある方にも、おすすめしたい一冊です!

わたし
わたし

最後までお読みいただき、ありがとうございました!

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