【ブックレビュー】『あしたから出版社』まさか、こんなに泣ける本だとは思いませんでした

本から芽がはえているブックレビュー

『あしたから出版社』島田潤一郎[著]ちくま文庫

本の大まかな内容

小説家を目指したが、才能がないとあきらめた32才。全力で仕事を探したが、面接にさえたどり着けなかった……
就職をあきらめた著者に残されたのは、大切な人たちのために、一編の詩を本にすることだった。

誠実にていねいに、良書を生み出し続ける「ひとり出版社」夏葉社がどう始まったのか、本を作るとはどういうことか、など、著者のさまざまなエピソードとともに語られる、心打つエッセイ。

こんな方に特におすすめ

✅本好きな人
✅本を作りたい人
✅大切な人を亡くした人
✅夢に挫折した人
✅就活、転職活動に行きづまっている人
✅生き方に悩んでいる人
などなど……ここにあてはまらなくても、たくさんの人におすすめしたい、胸アツの本でした!!

わたし
わたし

わたしは、何度もグッときて、何度も涙を流して読みました。心がこもった本だな、と感じ入りました😭

普通の生き方、できなくていい

著者は、大学在学中に小説家を目指すことに決め、就活をせず、卒業後、アルバイトをしながら、小説を書いていましたが、「才能がない」とあきらめて、仕事を探すことになります。
でも待っていたのは、8か月活動して、50社から断られる、という、それはそれは厳しい現実でした。
著者は、就職することをあきらめます。
普通の生き方を、あきらめたと言ってもいいでしょう。

普通の生き方とは、就職活動をして、正社員として働き、結婚し、子供をもち、車をもち、自分の家をもち……というような暮らしをしている人のこと。
著者は、そういう普通を目指したけれど、社会は受け入れてくれませんでした。
本書を読んだとき、わたしは、ある本の一節を思い出しました。
それは、phaさんが書かれた『持たない幸福論』という本の中の一節です。

普通とされている生き方モデルがすごく高いところに設定されていて、実際にそれを実現できるのは全体の半数以下くらいの人だけでしないのに、「真面目にやっていればそれをみんな普通に達成できるはず」というプレッシャーが社会全体に漂っている気がする。

『持たない幸福論』 pha著 幻冬舎文庫 11ページ

👆こういうことで、悩んでつらい状況にいる、という方が多いのでは?
本書の著者、島田さんもそうでした。でも著者は、そのつらさを乗り越えて、やりたいことを見つけて、勇気を出して、踏み出しました。
それが「ひとり出版社」だったのです。

やりたいことの見つけ方

就職をあきらめ、何もすることがなくなった著者が、どういう流れで「ひとり出版社」にたどり着いたのか。
それを見つけ出していく流れが、普通を生きれず、苦しんでいる多くの人にも、きっと大きなヒントになるのではないかと思い、少し抜粋させていただきます。

❶何もすることがなくなったとき、普段何げなくしていることをやってみる
 ★著者の場合は、本屋へ行き、本を眺めたり、その行き帰りの道のりで、いろいろと考えた

❷これまでの人生で、自分がほかの人より、情熱を注ぎ、飽きずに続けてきたことはなんだろう? と考える
 ★著者の場合は、本を買い、読むことだった

自分が大切に想っている人のためにできることはなにか? と考える
 ★著者の場合は、叔父と叔母のためになにかをしよう、と考えた

著者は、深い悲しみの中にいる叔父と叔母に、寄り添えるような本をつくりたい、ということを思いついて、行動に移しました。
❶~❸がミックスされた具体的な目標が見いだせたことが、著者の最初の成功だと感じました。

著者の叔父と叔母が、なぜ深い悲しみの中にいるのか、そして、なにが著者に勇気をもたせたのか……。
それはぜひ、本書を読んでみてください。
最初の数行で、もう本の世界に惹きこまれてしまうと思います。

わたし
わたし

わたしは、そこから一気に読みました!!

著者を通して、自分の生き方を振り返る

勇気を出して、一歩踏み出したからとはいえ、夏葉社を立ち上げたことが、どれだけ無謀だったか、ということが、とてもリアルに書かれていて、面白いです。
編集も今までしたことがない、イラストとかデザインとか、誰にどう頼めばいいのかわからない……などなど。
でも、何もわからない状態から、ひとつひとつ積み重ねて、一生懸命、本を作ります。

わたし
わたし

その過程もとても面白く、惹きこまれて読みました。

そして、その本を書店に置いてもらうべく、書店へ営業に向かいます。
このときの、書店員の対応がさまざまだったことが書かれています。
本のことが詳しくて、良書だとわかってくれる書店員から、はなから売れないと冷たい反応をする書店員まで……。

ここを読んだとき、自分もかつて書店員だったので、胸が痛くなりました。
もしわたしが書店員のときに、著者が営業にきたら? と考えてしまったからです。
わたしは、ちゃんとていねいに対応できただろうか? 夏葉社の本を注文したんだろうか? 
いや、「小さい出版社だからな……」「ちゃんと返品はできるんだろうか?」と、一瞬のうちにネガティブなことを考えて、注文書だけ受け取って「後で注文します」とかなんとか言って、遠回しに断っていたんじゃないか? などと、ぐるぐると考えました。

書店員時代、実際に👆のようなネガティブな態度を取ったことをありありと思い出し、恥ずかしく、申し訳ない気持ちでいっぱいになりました。
書店を辞めてから、何年も経ちますが、あのときのようなネガティブな態度を、今、別の人たちに取っていないだろうか? と考えたり、自分の根底にある根性の悪い部分を見直すきっかけになりました。

巻末の解説でも、こう書かれていました👇

この本を読む人は、島田さんの生き方にふれ、ごく自然に、自分の生き方についても振り返り、考えることになるだろう。

『あしたから出版社』島田潤一郎[著]ちくま文庫 327ページ

自分がまさにそのような体験をしたので、的を射た解説だな、うなりました。

解説を書いたのは、『絶望名人カフカの人生論』などの本を出されている文学紹介者の頭木弘樹さん。
この解説もすごく面白い!
本好きや、本のプロの人たちにとって、夏葉社とはどんな存在なのか、どう発見され、注目され、応援されるようになったのかがよくわかります。

表紙がおしゃれ

本書の表紙って、すごく印象的でおしゃれだな~と思います。
最初にこの本を見かけたのは、ツイッターだったのですが、一度見ただけで、忘れられなくなりました。

本書を文庫版にするときに、表紙をどうするか? と聞かれた著者の島田さんが、大好きな漫画家の望月ミネタロウさんを希望して、実現したとのこと。
そういう島田さんのセンスの良さが、本書にも、夏葉社の本に潜在的に宿っていて、そこにも人々が惹かれているんじゃないかな、と思いました。

まとめ

他にも、面白いエピソードが満載の本書。特に、ピース又吉さんの奇跡的な話と、絶版だった本を復刻し、ご家族が涙した話も感動でした。

本好きにとってたまらない内容ですし、また、一人の若者の青春記として、そして、大切な人を失った人間の人生録としても、とても素晴らしかった✨
たくさんの人に読んでほしい良書だと、大きな声で言いたいです!!

わたし
わたし

最後までお読みいただき、ありがとうございました!

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