【ブックレビュー】『子供の領分』切れ味ある文章が心地いい。短編の名手の絶品短編集

子供を肩車する父親 ブックレビュー

『子供の領分』吉行淳之介[著]中公文庫

本の大まかな内容

若くてハンサムだと評判の父親と二人っきりで旅行に行くことになった少年のひと夏の物語や、当時、薬が開発されていなかった腸チフスに突然かかってしまい、隔離病棟へ入院することになった少年の話などなど…。
著者の実体験もたくさん取り入れられた短編集。

1975年に出版された『子供の領分』から、10篇を選び、全集に無収録で、集英社文庫版(1993年)、そして角川文庫版(1979年)に入っていた2作品を加え、新たに、安岡章太郎と妹の吉行和子の書下ろしエッセイも加わったのが本書。中公文庫版(2021年)です。

こんな方におすすめ!

💎上質な短編小説を読みたい方
💎若いお父さんを持つ子供の気持ちを知りたい方
💎オチはないけど、最後まで読ませてしまう才能を感じたい方

わたし
わたし

読めば、何度も文庫化されている意味がわかります!

著者の吉行淳之介って、どんな人?

本書の著者、吉行淳之介のプロフィールをカンタンに紹介しますと👇
1924年(大正13年)岡山県生まれ。東京大学英文科中退。『驟雨』で第31回(1954年上半期)芥川賞受賞。
性を媒介として人間を探求した作品で高い評価を受け、そのほか短編や、随筆、雑誌で対談の連載を長年つとめるなど、多才な活躍をした。
1994年(平成6年)70才で肝臓がんで死去。父は、詩人の吉行エイスケ、母は美容師の吉行あぐり、妹は、女優の吉行和子と、作家の吉行理恵。

母親の名前『あぐり』を見て、NHKの連続テレビ小説を思い出された方も多いのでは?
著者の母親が主人公だったんですね!

『あぐり』は、1997年(平成9年)4月7日から10月4日まで放送されたNHK『連続テレビ小説』の第56作。
この『あぐり』は著者の母親だったんですね!ちなみに、著者をモデルにした役を演じたのは、山田純大さんらが、父親のエイスケ役は、野村萬斎さんでした。

実体験をベースにした作品が収録されている本書『子供の領分』

本書の中で、主人公の少年と、『若くてかっこいい父親』が出てくる物語があるのですが、この父子は、エイスケと淳之介、本人たちの実際のエピソードを元に創作しているそうです。
(巻末エッセイの、妹吉行和子さんの書下ろしの中に書いてありました)

著者の端正な顔立ちや、役者さんを思い浮かべながら、この若い父親と息子の物語を読む、というのも、なかなか味わい深い読書になるのではないでしょうか✨

オチはない。でもおもしろい!

今回初めて吉行淳之介さんの本を読みましたが、最初の短編を読み終わったとき、最後、物語としてのオチ、結論がなかったので、正直ちょっとがっかりしました。
そんな心を引きずりながら、次の短編も読み、また「オチがない…」と思いつつ、また次を読む……を、くり返していました。
でも、本を読むのをやめよう、とはなりませんでした。

「オチがない」 = 「つまらない」 ではなく⇒ 期待していたものを超えた魅力があるんだ、と気がつきました!

期待していたものを超えた魅力 を具体的にいうと⇒ 読み始めると、その世界に入り込んでしまって、出たくなくなる……という感じ✨

どうしてそんな気持ちになるのか……その理由は著者の『覚悟』だったようです👇

文筆で生計を立てる、という覚悟

芥川賞を受賞した頃、著者は病気を患っており、文学で生計を立てるのはむずかしいと考えていながらも、「文筆で生計を立てることを決心した」という。

その頃のことを、同じ時代に活躍していた作家仲間の安岡章太郎さんが巻末エッセイで書かれていました。

吉行には感覚的にすぐれた天分があり、文章に切れ味の良さがあった。(略)その吉行が短編小説に独自の文体を作り上げ、余計な肉を削ぎ落として自在に動けるようになったのは、芥川賞をとって四年か五年たった頃、(略)

『子供の領分』吉行淳之介[著]中公文庫 232~233ページ

本書に収録されている『夏の休暇』を著者が書いたのは、芥川賞を受賞した翌年頃。『作家で生きる!』と決めた、ちょうどその頃だったんですね! そんな著者の魂が小説の中に立ち込めているから、読者を最後までひきつける作品になっているんですね✨

わたし
わたし

「オチがない」の効果としてもう一つ、小説の世界に終わりがなく、まだこの世のどこかで続いているような気させてくれること✨
しかも、別の短編に、『一朗』という同じ名前の少年が出てくるので、本書が『一朗』のパラレルワールドのようにも感じて、不思議な気分になりました!

ツイッターの『#読了』のタグで、おもしろい本を見つける!

わたしが、本書『子供の領分』を見つけたのは、ツイッターでした。

『#読了』というタグを、ご存じでしょうか?

『#読了』とは、ツイッターで読み終えた本の感想や画像を投稿するときにつけるタグのこと

わたしも👆上のように『#読了』をつけて、投稿しています。
『#読了』で検索すると、読書好きの方々の読書感想をたくさん見ることができます。

わたし
わたし

感想もおもしろいのですが、本と珈琲の写真とか、ケーキやお菓子も一緒に映っていて、眺めているだけでも楽しいんです🍰☕📖✨

その、『#読了』ツイートの中に、本書『子供の領分』を見かけて、こんな本が出てるんだ! と興味を持ちました。
・吉行淳之介さんも、まだ読んだことがなかったこと
・最近(2021年)に発売されたこと
・文庫本なので、読みやすそう
こんな理由も重なって、手にとりました! そしたら、大当たり!だったのです!!

「なんか、おもしろそう」と、気になった本は、とにかく読んでみるのがいいんだな~と実感しました。

わたし
わたし

ツイッターで、本書『子供の領分』をつぶやいてくれたアカウントの方に感謝です✨

わたし
わたし

最後までお読みいただき、ありがとうございました!

コメント