『ナイルパーチの女子会』を読んで思ったこと

ブックレビュー

『ナイルパーチの女子会』柚木麻子[著]文春文庫

本の大まかな内容

大手商社で正社員の志村栄利子は、あるブログのファンであった。
それは、主婦が日常をつづっているだけのブログだったが、その力の抜けた記事が、気を張って生きている栄利子の癒しとなっていた。
栄利子は偶然、そのブログを書いている主婦、丸尾翔子と知り合え、一緒に食事し、意気投合することができた。
同じ30才の女同士。栄利子は『初めて友達ができた』と、有頂天になる。
が、あることをきっかけに、二人の関係はねじれていき……

感想

あまり前情報を入れずに、可愛らしい本の表紙のイメージだけで読み始めたら……かなりヘビーな内容でびっくり。
だからと言って読むのをやめたくなることはまったくなく、むしろ逆に、「この2人はどうなっていくの?」と気になって、ページをめくる手が止められませんでした。

いろいろ考えさせられたし、しんどかった。でも、おもしろかった! これは間違いないです!!

わたし
わたし

すべての女性に読んでほしいなと、思いました!

ベビーカーに乗ってる赤ん坊のことが、うらやましかった

本書の中で、いつまでたっても大人になれない女の子 のことが書かれていました。
そこを読んで、思い出したことがありました。それは、

私も、ベビーカーに乗ってる赤ちゃんを「うらやましい」と思っていたこと。

あそこに座っていれば、守られていて、歩かなくてもよくて、完全な安全圏にいられる。
それにくらべて、大人になった自分は、自力で移動しなくてはいけなくて、そうすると、事故に遭うかもしれないし、ちかんに遭うかもしれないし、危険がいっぱい。だから、街でベビーカーに乗っている赤ちゃんを見かけると「いいな~」と羨望のまなざしを送っていたのです。

👆これをよく思っていたのは、20~30代の頃。その若さの自分は、外部からの攻撃に対して、気を張っていなくてはいけなかったな~と、本書の、30才の主人公たちを見て、思い出していました。

わたし
わたし

年をとった今は、ベビーカーに乗っている赤ちゃんを見たら「かわいい」と素直に思えるようになりました。これは、危険なことへの、対処の仕方を学んでいたり、回避の仕方をわかっていたりしているからかもしれません。年を取るのも、悪くないですね!

友達がいる、いない問題

本書では、『友達がいない』ということが、大きなポイントになっています。
学生時代に、友達を作れないまま、大人になってしまった生きづらさ、そして、大人になってからの友達づくりとはどういうことか、みたいなこともリアルに描かれています。

わたし自身は、多くないけれど友達はいるので、栄利子たちの本当の孤独がわかるわけではなかったのですが、彼女たちの右往左往を見ていて、友達がいることのありがたみをすごく感じました。
特に、20~30代のときは、独身でいることや結婚すること、仕事はこのままでいいのか? 人生の目標を決めなくては…などなど、一生の中でも、いろいろ決めることが多い時期。

わたしには幸運にも同じ年代の友達がいたから、悩みを分かち合えたり、励ましたり励まされたりできたから、乗り越えられたんだな、と本書を読んで、改めて気づきました。

あたりまえと思っていたことが、全然当たり前じゃなかったと気づかせてくれた本書に、感謝したいです。

自分ルールは、わりと間違っている

『~するべき』『~しないのは、おかしい』というような、世間を基準にした自分ルールを持っている人は、わりと多いのではないでしょうか。
本書の栄利子はその典型で、『友達がいないのはおかしい』というルールに基づいて行動してしまい、いろいろとこんがらがってしまった…。

自分というたった一人の知識や経験、自分が関わった周囲の人々だけの狭い世間で作ったルールなんて、たいてい間違っているんですよね💦

……と、自分はわかっている風なことを書いていますが、自分も、いつ、どんなきっかけで、栄利子のような、「どうしてうまくいかないの?」という樹海に入り込んでしまうか、わからない。本書を読みながら、『これは他人事ではない』と背筋をひんやりとしてしました。

でも、読み進めるうちに、『失敗してわかることもある』そして『やり直すこともできるんだ』ということも、伝わってきました。

物語の中で、登場人物たちがつらい思いをして身をもって教えてくれているんだ、と感じて、彼女彼らに「ありがとう」と言いたくなりました。

冷凍食品の日は、夫に謝っている自分

わたしは主婦ですが、家事はなるべくズボラしたい、というやつで、丸尾翔子の性格に近い。
でも、家計は折半なので、家事も半々でいいことになっています。
一応、料理は担当していますが、夫からは「ご飯とサラダ的なものがあればOK」と言われています。

だけど、メインのおかずを作ってしまいます💦
自分が食べたいメニューだから、とか、食費を節約するため、という理由もあるけど、作っていると気持ち的にラクというのが大きい

それが証拠に、たまにメインのおかずを作らずに、冷凍食品になる日は、夫に「ごめんね」と謝っている…。
料理をさぼったことへの謝罪を、自然と口にしている自分に気づいて、愕然とすることがよくありますました。このもやもやした気持ちをどう表していいか、わからなかったのですが、本書を読んで、

『先回りして気を配れる女でいること』を自分の存在理由にしている そして、それが無意識下に刻み込まれている

という言葉があてはまるんだなと、気がつきました。

本書の中では、そういう、根深い問題が書かれているので、わたしの中の無意識も、表面に出てきたんだと思います。
本書を読むのが「しんどかった」のは、自分の中にあった、暗い思い込みに気づかされるから、だったんですね。

自分の存在理由なんて作る必要はない。この世に生まれてきた時点で、神様からOKもらってるんやで
と、自分に、そして、栄利子や翔子、この物語に出てきた全員に言ってあげたい!と思いました。

ずっと抱えていたもやもやを、言語化してくれた

小説を読む効能として、涙を流して心を浄化することや、劇的な結末に心震わせる、またはただただ癒される、などいろいろありますが、
本書は、ずっと抱えていたもやもやを物語というエンタテインメントにしてくれて、自分の中のもやもやを言語化でき、すっきりした気分になれる効果があったな、と個人的には感じました。

そのもやもやを全部捨て去ることはできないのだけれど、言葉にできると、客観的に受け止めて対処できるような気がしています。

たとえると、心の暗部を取り出して、天日干しして、おいしい干物にして保存食として常備しておくことが可能になった、みたいな感じ。
芋けんぴではなく、干し芋を常備しておけば、安心ですね🍠✨(←芋けんぴが出てくる、修羅場の場面がありますよ!)

いろんな気づきをくれる素晴らしい小説でした。ラスト、グッときて胸が熱くなりました。
女性の方にぜひ読んでほしい一冊です! 

テレビドラマ化もされていました!

わたし
わたし

最後までお読みいただき、ありがとうございました!

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