『悪女について』まだ有吉佐和子を読んでない人はぜひ!! 【ブックレビュー】

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『悪女について』有吉佐和子[著]新潮文庫

本の大まかな内容

何十もの会社をもつ、美貌の女性実業家、富小路公子(とみのこうじきみこ)が亡くなった。
状況からは、自殺か他殺かわからない。
彼女の周囲の人たちにインタビューを続けるうちに、彼女の虚構の生き方が浮かび上がってくる……。

主人公の富小路公子は登場せず、周囲のインタビューだけで構成されている小説。
総勢27人の男女が語るそれぞれの『公子』。
それはフィクションにフィクションを塗り重ねて作り上げられた、女の一生だった。
彼女は幸せだったのか? という思いに浸る、読後感でした。 

こんな方におすすめ

✅昔の名作で、おもしろいものを探している方
✅インタビュー形式の小説を読みたい方
✅戦後直後~昭和50年くらいの日本社会のジェンダーや華族について知りたい方

わたし
わたし

小説の面白さももちろんあるんですが、時代の空気感を味わえるのも、すごくよかったです!

有吉佐和子さんを初めて読んだ!

お名前だけは知っていたのですが、恥ずかしながら、有吉佐和子さんの作品を初めて読みました!
きっかけは、『名作なんか、こわくない』という柚木麻子さんが書かれた、古典名作を紹介した本を読んだこと

この本の中ではたくさんの名作が載っていましたが、その中の一冊、『悪女について』を読んでみたら・・・これが本当におもしろかった!

わたし
わたし

素晴らしい本を知ることができた『名作なんか、こわくない』に感謝です😭

わたしが読んだ『悪女について』は新潮文庫でしたが、なんと令和元年73刷版でした。(文庫の初版は昭和58年)
2012年にドラマ化もされていました。

これだけ長い間重版され続けている名作ですから、おもしろくて当然だったんですね!

わたし
わたし

続きが気になって、コロナワクチン3回目の副反応でふらふらなのに、本を閉じることができませんでした📖✨

主人公が出てこない小説

『悪女について』の主人公は、富小路公子という一度聞いたら忘れられないような名前の濃いキャラクターなのに、一度も登場しません。
というのも、この小説は、主人公の周囲の人たちにしたインタビューだけで構成しているから。インタビューされた人の数、総勢27人。

1章ごとに、インタビューを受ける人が変わり、その人の語り(一人称)で書かれています。
インタビュー形式の小説は、宮部みゆきさんの『理由』や、主人公が出てこない形式だと、朝井リョウさんの『桐島、部活やめるってよ』がありますが、どちらも人気のある作品ですよね。
この『メイン(主人公)のことを、周囲が語る』という逆説的な仕組みは、主人公が多面的であればあるほど、「どんな人物なんだ?」と興味がよりいっそう強くなっていきます。

しかも、本書『悪女について』は、主人公の富小路公子はすでに亡くなっていて、その死因の謎が、インタビューを通して解き明かされていくというミステリーの魅力もあり、ページをめくる手が止められなくなりました!

昭和の空気感って、こんな感じだった・・・

富小路公子の人生がいろんな人から語られていくので、公子が生きた、戦後~昭和50年くらいまでの日本の様子を感じられるのも、本書の魅力。
特に、この時代のジェンダーや華族の暮らしがリアルに描かれていて、とても興味深かったです。

制度が廃止された華族たちの暮らし

公子が小学生の頃の昭和22年(1947年)に華族制度が廃止になります。が、まだまだ『生まれ』についての差別は根強く残っていました。
上昇志向の公子は、庶民の生まれだったので、旧華族の同級生と仲良くし、その家にひんぱんに通ったりして、その同級生のお母さん(バリバリの華族な人)の口調やしぐさを完コピしたりします。

公子はもともと、穏やかな声や人好きする性格をもっていたのですが、そこに、上品な話し方や作法などをカスタマイズして、『自力の上流階級』を作り上げていきます。
その上、夜学に通って、簿記の知識をも身につけてしまう。
最初は憧れだったかもしれない『上流階級という生まれ』を後づけし、それを利用することで仕事の成功にも結びつけていく公子。

それとは対照的に、『生まれ』をプライドとして生きてきた旧華族の人たちの戸惑いや、その子供(公子の同級生とその兄)の、新しい時代と失意の親とのハザマの立場を感じられたことも、この小説からの収穫でした。

わたし
わたし

知らなかった時代や世界を垣間見れるのが、小説の、特に昔の小説のお得なところですね!

昭和時代の、男と女

本書『悪女について』は、インタビュー形式の小説なので、それぞれインタビューを受けている人の主観が語られていきます。
総勢27人の人間から見た、たった一人の女富小路公子は、まるで別人。27通りの公子がいるのです。
ある人にとっては『聖女』、ある人にとっては『詐欺師』、ある人にとっては『最愛の女性』などなど……。

人によって、態度や口調を変えてしまうことは、現実世界でもよくあることですが、公子は、それを意図的に、そして作為的に演じていました。
文庫の裏表紙にはこうあります👇

男社会を逆手にとり、しかも女の魅力を完璧に発揮して男たちを翻弄しながら、豪奢(ごうしゃ=大層ぜいたくで派手なこと)に悪を愉しんだ女の一生を綴る長編小説。

『悪女について』有吉佐和子[著]新潮文庫 裏表紙 ㊟カッコ内は、ブログ主が書き入れました

本書を読んで思ったのは、昭和の時代には、『女』を使わないと絶対に上がれない階段があって、公子が目指した高みはそこにしかなかったのかな、ということ。

もし、公子みたいな人が、この令和の日本にいたら、どう生きただろう? と考えると、
こんなめんどくさい小細工をしなくても、さっさと起業して、だんだんと規模を広げ事業を拡大して、大成功をおさめているだろうと想像できます。

ということは、今は、本書の時代よりは、かなり良くなってるんだな、という実感もわきました。

わたし
わたし

古典名作は、いろいろな気づきの宝庫でもあるんですね!

おわりに

以上が、有吉佐和子著『悪女について』のブックレビューでした。

いい小説って、ストーリーがおもしろくて、夢中になって読んでいるうちに、その小説の時代背景も一緒に感じ取って、物語の世界に自分も立っているような感覚になれるのがいいですね。

今、普通に読まれている小説も、50年後の若者たちに「なんじゃこりゃ」って目をまん丸にされるんだろうな😅💦
読書って、本当におもしろいですね👍✨

わたし
わたし

最後までお読みいただき、ありがとうございました!

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