『読書は格闘技』瀧本哲史[著]集英社文庫
本の大まかな内容
読書とは、単に受け身になってするのではなく、書いてあることに対して「本当にそうなのか?」と疑い、反証して、自分の考えを作っていくこと。
そう訴える著者が、それぞれのテーマに沿った2冊の本を選び、比較や対峙をしていくという、斬新な読書術本。
章の最後にあるブックガイドも、読書欲をそそる。
感想
著者のお名前は、よく目にしていましたが、今回初めて読みました。
読む前に著者のことをネットで調べて、そこで2年前(2019年)に若くして亡くなられていることを知り、びっくりしました。
本書がとても面白かったので、もっと早く読んでおけばよかったと、悔やんでいます。
『格闘技』というタイトルから、2冊の本を戦わせるのかな? と思いながら読みましたが、勝負というよりか、知識を2倍にも3倍にも上乗せしていくような印象。
本の内容に対しての深い考察はもちろん、本が書かれた時代背景や情勢などなど、ありとあらゆる情報が書き記されていて、圧倒されました。
文庫で、すごく薄い本なのですが、その知識の量はハンパない!
本当に読んでよかったです!!

以下、おもしろいと思ったところ
☆超超ロングセラー、デール・カーネギーの『人を動かす』に書かれている事例はあまり現代的でない。
☆だからこそ、読者はいったん自分の文脈に置き換えて、抽象化してから理解しようとするので、より理解を深めることができる。
☆『人を動かす』は、アメリカの文化的文脈で書かれた本なのに、ある種日本的な「おもいやり」「人情」風な記述もある。
☆それは、20世紀前半のアメリカという時代背景もあるのではないか(初期資本主義にともなう、極端な自己中心主義など)。
☆長らくライバルがいなかった『人を動かす』の弱点を正確についてきたのが、現代のベストセラー、ロバート・B・チャルディーニの『影響力の武器』。
★『影響力の武器』の特長、道徳的ではないこと(悪用厳禁な詐欺まがいの商売テクニックも考察の対象にしている)。
★その方法の根拠は、社会心理学上の実験によって証明されていることばかり。
★実験は、人間の合理性、意志といったものよりも、不合理、無意識に焦点を当てている。
★こういう実験は、いまや主流の考え方で、経済学にも影響を与え、そこから出てきた「行動経済学」の研究はノーベル賞を受賞するに至っている。
☆モーツァルトに代表される「神童」も、実は親が開発した訓練メソッドが画期的だったことが大きい。
☆「才能に恵まれている人」は子供の頃にめざましい成果を出していなくても、環境が整備されていて、かつ「上達への強い欲求」があった結果、才能を開花させるケースがある。たとえば、マイケル・ジョーダンやヨーヨー・マ。
☆でも、これは努力だけで解決するというものではなく、高い目標を達成するための、動機を見つけて、自分を厳しく律することが大事。 ☆上記3つは、デイヴィッド・シェンクの『天才を考察する』より。
★多くの教科書で採用されている中島敦の『山月記』は、高校二年生が、自分の才能、適性、努力について悩むタイミングで教えられる。
★高卒で就職する生徒にとっては、社会に組み込まれていくことについてひとりしきり考えるタイミングで教えられる。
『おもしろいと思ったところ』で出てきた本はこちら👇👇👇👇

天才を考察する―「生まれか育ちか」論の嘘と本当
読書術本についてのブックレビューは、こちらです👇👇


最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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