『明けない夜もある』……?夜の世界にどっぷりつかる怪談青春ファンタジー「夜行」【読書感想】【京都】【尾道】【奥飛騨】【津軽】【天竜峡】

夜行サムネ画像ブックレビュー
こんな方におすすめです!
◎ダークファンタジーが好きな方
◎列車好き、旅行好きの方
◎森見登美彦さんの初期作品しか読んだことがない方
わたし
わたし

表紙のかわいらしいイメージとはかなり違う、ダークな世界観の物語。迷宮にはまったような読書体験でした😨

本の大まかな内容

10年前、京都の英会話スクールに通う6人の仲間で、鞍馬の火祭を見物に出かけたが、その夜に長谷川さんが姿を消してしまう……。

そして時が経ち、残された5人は、10年ぶりに火祭にでかけることになる。火祭に出かける前に、宿で夕飯を食べながら、それぞれが旅先で出会った不思議な出来事を語り始める。

そのすべての話に、『夜行』という連作絵画が出てくる……。描いた画家の岸田という男とは? そして、長谷川さんと再会することはできるのか?

直木賞と本屋大賞ダブルノミネート
尾道がキーポイントとなることもあり、広島本大賞も受賞しています。
森見
登美彦さんの作家生活10周年の集大成とのいえる作品!

※直木賞⇒2016年第156回ノミネート 
 本屋大賞⇒2017年度8位 
 広島本大賞⇒2017年度受賞

今までの森見さんとは違う……怖い……

わたし自身、森見さんの初期作品『太陽の塔』『四畳半神話大系』『夜は短し歩けよ乙女』などを読んできて、『おもろいファンタジーを書く作家』というイメージをずっと持ってきました。
が、本書『夜行』は、そのイメージとはガラリと違うものになっていました。

ゾゾっと背筋が凍るような物語でったのです😨💦

物語の冒頭は、いつのもように舞台が京都だったので、安心感をもって読み進めていました。

が、英会話スクールのメンバーが10年ぶりに再会し、宿で温かい鍋を囲んでにぎやかだったのに、メンバーが語り始めます。

尾道(広島)、奥飛騨(岐阜)、津軽(青森)、天竜峡(長野)と、京都以外の場所で起こった不思議な出来事ばかりです。

その、メンバーのそれぞれの話が、連作短編のように濃密で気味悪い……。

小説の世界に迷い込んだような感覚になり、引き込まれました。

心の闇と『夜行』が絡み合う……

 あの夜、僕らは個室の明かりを消して、深夜まで車窓を眺めていた。黒々とした山影や淋しい町の灯が流れ、通りすぎる見知らぬ駅舎の明かりが妻の横顔を青白く照らした。車輪がレールの継ぎ目を超えていく音に耳を澄ましていると、まるで夜の底を走っていくように感じられた。車窓をよぎる夜の町を眺めながら妻は言った。

「夜明けの来る感じがしないね」

 今となってはそれが不吉な予言のように思える。

『夜行』森見登美彦著 小学館文庫 49ページ

『個室』とは、『夜行列車』の個室のこと。英会話学校のメンバー中井が語る、不思議な話の中の一節です。

この小説は、『夜』が大部分を占めています。
その『夜』が本当に、『明ける気配がない』のです……。

描かれている『夜』の深く濃い『闇』は、英会話スクールメンバーそれぞれの『心の闇』なのかな、と感じました。

厄介ごとからいつも逃げてしまう、とか、大人のフリで無責任を隠しているとか……。

本人も気がつかないようなささいな『厭な部分』=『心の闇』が、身近な人を傷つけて、そのちりが積もりに積もって、ある日世界が反転してしまう……。

でも、『心の闇』は誰でも少しは持っているものではないでしょうか?

わたし
わたし

わたしにも『厭な部分』がたくさんあります💦💦

だから、『夜』にはまった登場人物から目が離せなくなる。

『本当に、夜は明けないのか?』と。

その不安感と不気味さにどっぷりつかったまま、結末はどうなるのかを見届けなければいけない、という気持ちになりました。

わたし
わたし

ラストがどうなるのかを知りたくて、ページをめくる手が止まりませんでした!!

まとめ

京都や尾道、青森などなど、日本各地をめぐりながら、『夜』の世界にひたれる『夜行』。

暑い季節なら、クーラーいらずに、
寒い季節なら、長い夜のお供に、なる一冊だと思います!!

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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