弱いからこそ生きた?矛盾の天才の生きざまが面白い『カフカはなぜ自殺しなかったのか?』【おすすめ本】【生きづらい】【作家の生涯】

カフカはなぜサムネ画像ブックレビュー

こんな方におすすめです!
◎『普通』ができず、生きづらさを抱えている方
◎作家カフカがどういう人だったか知りたい方
◎作家が書き残した、手紙や日記を読みたい方

カフカの本を読んだことがないという方も、彼が残した手紙や日記の魅力と、彼の矛盾に満ちた生きざまに、本書を読み進めずにはいられなくなるはず!

わたし
わたし

読後感が、最高に心地よかった一冊です!

本の大まかな内容

「死にたい」と切望しながら、結局自ら命を絶たなかったカフカ。
40歳で病死するまで、3回の婚約と3回の婚約解消をしていたりと、『普通のこと』ができず、『決断』できない人生を送る。
その心境はどんなもので、どうして自殺しなかったのかを、カフカが残したたくさんの手紙や日記から掘り下げていく。

カフカとは?

「ある朝、目がさめたら、ベッドの中で虫になっていた」という出だしで有名な『変身』という小説を書いた、フランツ・カフカ。
1883年7月3日に生まれ、1924年6月3日に結核で亡くなりました。

サラリーマンをしながら、執筆し、生前に出版された本は、一部の作家にしか評価されず、ほとんど無名だったそうです。
日本ではどうだったかというと👇

最初の日本語訳が出版されたのは昭和15年(1940年)。白水社刊、本野亨一訳『審判』。6、7冊しか売れなかったそうです(そのうちの1冊を安部公房が手に入れていました)。

「カフカはなぜ自殺しなかったのか? 弱いからこそわかること」頭木弘樹著 春秋社 11ページ

今では、知らない人はいないほどの大作家なのに、最初はこんな売れ行きだったんですね……

わたし
わたし

このとき買ってた阿部公房さん、すごいな~😲✨

そして、なんといってもお顔がすごくハンサム🧒🏻✨

本書にも書かれていましたが、日本の作家でいうと、芥川龍之介や太宰治とタイプが似てます。
芥川龍之介も太宰治も、生前「死を予感」させ、実際に自殺しています。
でも、カフカは自殺しなかった。

それはなぜなのかを、大量に残っていたカフカの手紙や日記、そして、親友の日記や周囲の人からの証言などから、掘り下げていきます。

『生きづらい』が服を着ているようなカフカ

今、コロナの影響で、自殺者も増加したというニュースも流れていますが、このカフカという人も、なかなかの『生きづらさ』を抱えた人でした。

親友や恋人には心を許しましたが、世間でいう『普通』のことができない人でした。
集まりに参加したり、定期的にデートしたり、ましてや結婚して家庭をもつなんてことはできないと、カフカ本人もわかっていました。

これは、もともと持っていた性質や、『真っ当な道』に行かせたがる両親への反発などが根っこにあったようです。

運命の女性フェリーツェと出会う

そんなカフカでしたが、手紙を書くことが大好きでした。
29歳のときに、フェリーツェという女性に出会います(彼女は24歳)。彼女を好きになったカフカは、迷いに迷ったあげくに手紙を出して、ようやく文通にこぎつけます。

そんな幸せな状況なのに、カフカは彼女にこんな手紙を送ります。

ぼくは子供をもつことは決してないでしょう。それは確実です。

「カフカはなぜ自殺しなかったのか? 弱いからこそわかること」頭木弘樹著 春秋社 121ページ

カフカの妹エリに子供が生まれたことで、その義弟(エリの夫)に「激しい羨望」を感じたと、上の文を書いた手紙に書いてます。

『普通』のことをなんなくやってのける親類たちを目の当たりにして、自分にはできないと確信してしまったのかもしれませんが、将来結婚をするかもしれない大好きな人に自分の気持ちをそのまま伝えてしまうカフカは👇

悪くいえば ⇒ 自分のことしか考えてない
良くいえば ⇒ 隠し事ができない

今の時代でも、『普通』のことができない人はたくさんいると思います。
カフカの時代よりは緩和されているとはいえ、まだまだ世間の目があります。

だから、カフカのこのまっすぐな行動を読むと、「なにやってんの?」と呆れる一方で、「わかる。その通りだ」とも思う。

カフカは『彼女と結婚したい』けど『結婚はしたくない』という両方を持っている。
そういう『矛盾』をたくさん抱えているカフカから、どんどん目が離せなくなります。

どうして目が離せなくなるんだろう? と考えてみました。そしてでた答えが👇

🔷自分の苦しい思いもいっしょに持ってくれてるように感じる
🔷カフカはどうなるんだ? と、自分の悩みを一瞬忘れてしまう
🔷自分の苦しみはちょっと横に置いておいておける
……というような反応が起きてしまうからだと、気がつきました。

わたし
わたし

カフカって、不思議な魅力の持ち主なんですよね✨

カフカの手紙や日記は、作品レベルの面白さ

親友マックス・ブロート

人づき合いが下手でひきこもりがちなカフカでしたが、とてもいい親友がいました。
マックス・ブロートです。カフカより1つ年下で、カフカと同じ大学に、入学したてのときに出会いました。

ブロートは、すでに作家、詩人、音楽家、作曲家と、何を語らせても才気あふれていて、学生たちの中心的な人物でした。

タイプが全く違う2人が知り合うきっかけは、ブロートが大学で講演していた後に、カフカがブロートに話しかけたことでした。

まったく社交的でないカフカが、なぜブロートに声をかけたのか?
それは👇
講演の内容に、異論を唱えるため

そんなことされたブロートが、カフカに怒ってもおかしくない状況です。
なのに、ブロートはこのことがきっかけで、カフカと生涯の友情を築き、
カフカの死後も、カフカの作品を世に広めるために奔走します。

世界中の誰よりも、早く深く、カフカの才能に気づいていたブロート。すごい人です✨

わたし
わたし

彼のおかげで、現代の私たちがカフカの作品や日記に触れることができているんですね!

カフカの手紙を捨てなかったフェリーツェ

そして、もう一人先にも書いた、運命の人フェリーツェも、カフカの人となりを知るための大切な人物となります。

彼女は、カフカと2回婚約し2回婚約解消をしています。

問題は、決断できないカフカです。

それでも彼女は、カフカの手紙を捨てずに持っていました。

年月が経ち、自分の病気の治療費のために、しかたなくカフカの手紙を売ることになり、それで今、わたしたちはカフカの言葉に触れることができています。

カフカが、世界的に有名な作家になったのは、カフカが亡くなった後のこと。

だから、フェリーツェがお金のために手紙をずっと持っていたとはいえません。
フェリーツェはカフカを愛していたのだと思うと、著者も書かれています。

超ネガティブな面倒くさいタイプのカフカなのに、ブロートという最高の親友と、別れても手紙を大切に持っていた元婚約者のフェリーツェがいた。

やはりカフカという人間は、大きな魅力をもっていたんだろうな、と思わずにはいられません。

カフカは『言葉にすること』と真剣に向き合っていた

ある日のカフカの日記には、こう書かれています。

このところ、ぼくは自分についてあまり書きとめていない。(略)

自己認識を損ないはしないかという心配だ。

この心配は当然のことだ。

というのも、書きとめることで、自己認識は固まってしまう。(略)

1911年1月12日(27歳)日記

「カフカはなぜ自殺しなかったのか? 弱いからこそわかること」頭木弘樹著 春秋社 73~74ページ

👆ここはとても大切なことを言っていると、著者は指摘しています。

最近、「言語隠蔽(げんごいんぺい)」という現象が明らかになってきているそうです。

たとえば、事件の犯人の顔を目撃した人に、犯人がどういう顔をしていたのかを、
①言葉で説明してから、複数の写真を見せて選んでもらう
②言葉で説明せずに、複数の写真を見せて選んでもらう
↓↓↓
正しく犯人を選ぶ確率が高いのは、②言葉で説明しない方
↓↓↓
なぜか?
↓↓↓
顔をすべて言語化するには限界があるので、「大きな目」とか「高い鼻」とか、言葉にできたところだけ鮮明に記憶に残り、言葉にできなかった箇所は記憶から消えてしまったりするから。
それが、「言語隠蔽」という現象だそうです。

自分の心の中で感じたこともそうです。喜びにしろ、悲しみにしろ、怒りにしろ、感動にしろ、なかなか言葉にはできません。もし安易に「うれしい」とか「悲しい」とか言葉にしてしまうと、その言葉でとらえることができた感情だけが残って、その他の感情は、風が吹かれた煙のように消え失せて、もう自分でもよく思い出せなくなってしまいます。

(略)つまり、カフカは、言葉にすることの危険性にちゃんと気づいています。

「カフカはなぜ自殺しなかったのか? 弱いからこそわかること」頭木弘樹著 春秋社 75~76ページ

カフカは、言葉がもつ大きな意味を理解しながら、それでもなんとか言葉をつむいで小説を書いていた……。
それを知って、カフカの小説を読むと、また深い読書体験ができそうですね!

わたし
わたし

「言語隠蔽」という現象。ものすごく勉強になりました。
この本を読まなければ、知ることができなかった知識!
こういう思いがけない出会いがあるのも、読書の醍醐味ですね!

弱者に寄り添うカフカ

小説で暮らしていくことは最初からムリだと思っていたカフカは、「パンのための仕事」をしていました。

初めての就職先は今でいうブラック企業💦
そこは10カ月でやめ、次は「労働者災害保険局」というところに勤め、「労働災害予防手段開発部門」に配属されます。
労働者がケガをしないように、いろいろ工夫するのが仕事です。

カフカは、自分の弱さを自覚しまくっている人ですから、『弱い立場の人』を見捨てませんでした。

こんなエピソードが残っています👇

これは後のことですが、建築現場で左足を砕かれた老齢の労働者が、法律上の不備のせいで、カフカの勤めている「労働者災害保険局」から年金をもらえそうにありませんでした。そのとき、名のある弁護士が乗り出してきて、お金をもらえるようにしてあげました。しかも、その障害者の老人から、まったく報酬をもらわずに。

この弁護士に依頼し、支払いをしていたのが、じつはカフカだったというのです。

「カフカはなぜ自殺しなかったのか? 弱いからこそわかること」頭木弘樹著 春秋社 59ページ
わたし
わたし

カフカ、めっちゃいい人やん😭

「パンのため」と惰性的にならず、弱い立場の人のために一生懸命働いていたため、小説を書くことが難しくなり、カフカはまた苦しみます。

でも、こういう優しさを持っていたカフカだからこそ、ブロートという信頼のおける親友に出会うことができ、
カフカが書いた作品を、世に知らしめるために、奔走してくれたのではないか、と個人的には思いました。

わたし
わたし

才能だけではなく、人間性や人とのつながりなど、すべてが関わり合っているんだな~と、本書から教わりました!

まとめ

『絶望名人』カフカが残したたくさんの言葉から、その生き様や心の動きを知ることができて、
「あーいい本読んだな~」と心地よい余韻に包まれました。

『自殺』という文字が入ったタイトルから、この読後感は想像もしていませんでした。

『なぜ自殺しなかったのか?』というのは、ぜひこの本を読んであなたの心で感じてください✨

本当におすすめしたい本です!

今、生きづらさを感じている人が、「俺よりひどい」とか「私の方がもっと苦しい」とか「すごく共感する」とか、いろいろ反応して、ほんの少しでも楽になれることを願います。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

コメント