本を作り、本を愛した、人生の大先輩が感じた『図書館』の存在意義とは?「図書館に通う」【おすすめ本】【読書感想】【本好き】

『図書館に通う』サムネ画像ブックレビュー
こんな方におすすめです!
◎図書館の歴史(戦中、戦後)の事情を知りたい方
◎図書館をよく利用される方
◎本が大好きな方
わたし
わたし

図書館をよく利用する一人として、図書館の未来が気になって読んでみましたが、図書館の歴史、問題、可能性が見えてきて、とにかく読んでよかったです!!

本の大まかな内容

編集者、翻訳権のエージェントとして、60余年、出版界で活躍してきた著者が、一市民として図書館を利用するようになり、感じたことや気づいたこと、そして問題点や未来像をつづる。

本を愛した人生の大先輩が感じた、『図書館』という存在を通した『読書』の在り方が知れる一冊!

ピューリツァー賞のピューリツァーは、図書館に救われた

翻訳の仕事にたずさわってきた著者は、アメリカの図書館についても興味をもっていた。

すぐれた新聞報道や文学活動、楽曲作曲に対して授与される、アメリカのピューリツァー賞を、遺志で創設した、 新聞出版業で財を成したハンガリー生まれのアメリカ人、ジョーゼフ・ピューリツァーと、
図書館の関わりについて書いている。

〇ハンガリー移民だったピューリツァーは、英語がほとんど話せなかった
 ↓↓↓
〇ドイツ語が通じる地域(ミズーリ州セントルイス)に住んだ
 ↓↓↓
〇新聞人としてのスタートは、ドイツ語新聞「ヴェストリッヒ・ポスト」であった
 ↑↑↑
 ↓↓↓
なぜ、教養のない少年が、新聞王にまでのぼりつめたのか?
 👇👇👇 
図書館があったから

ピューリツァー自身がおどろいたように、アメリカの図書館はそこに住んでいるというだけで、無一文でアメリカの市民権をもたない少年に、無条件で本を貸す、それも持ち出して借りるのを許していることを知って、私は目をみはった。(略)アメリカの新聞王とされたピューリツァーを生んだのは、街の図書館だったのである。

『図書館に通う 当世「公立無料貸本屋」事情』宮田 昇著 みすず書房 24~25ページ
わたし
わたし

ピューリツァーのこのエピソードは、どんな人も平等に学ぶチャンスをくれる『図書館』の存在意義を強く感じる、いいエピソードですね!

一方そのころ、日本の図書館はどうだったのかというと…

著者が、このピューリツァーのエピソードを知ったのは、1970年頃。
このころの日本の公共図書館の蔵書数は、2858万冊(アメリカのほぼ6分の1強)。欧米とくらべてかなり後れていた。

それから40年ほど経った2008年の、日本の図書館の蔵書総数は、3億8600万冊!

日本の図書館の蔵書総数
1970年 2858万冊 ⇒ 2008年 3億8600万冊  およそ13倍!!

革命的に蔵書が増えました!! しかし著者は、この変化で新たな問題も見えてきた、という。

また、図書館の整備や蔵書の数が量的革命を起こしたことが、「図書館は無料の貸本屋か」という複本議論に象徴される、著作者側の批判を呼んだのであろう。しかし、図書館の役割をきちんと議論して深めないかぎり、デジタル、ネット時代に、出版社は生き残ることは不可能である。

『図書館に通う 当世「公立無料貸本屋」事情』宮田 昇著 みすず書房 26ページ

複本とは、一つの図書館で、ベストセラーなど人気の本を多数購入し、貸し出すこと。
「複本問題」と呼ばれ、これが書籍の販売のさまたげになっているのでは? と一時騒ぎになったのですが、実際には、多数の複本を所蔵していることはそれほどなかったとわかり、議論は沈静化した。

しかしまだ、残された問題がある。
◆ベストセラーの本が予約数が数百人あり、借りれるのが1年後という現状
◆その間に、本当は売れてた本が売れないのでは?
 というもの。

本以外にも情報収集や勉学方法、娯楽がある現在。
雑誌・書籍の売り上げ低下、若者の活字離れなど、本をめぐる環境は厳しさを増している。

60余年、本とかかわってきた著者は、自分の体験と絡ませながら、本の問題について、書きつづっています。

高齢のお姉さんを救った『大活字本』

著者の高齢のお姉さんが、特別養護老人ホームに入ることになった。
1年くらいは何も問題がなかったが、急にお姉さんから電話がひんぱんにかかるようになった。

内容は、ホームの入居者からいじめを受けている、というものだった。

介護人もいるし、個室で生活しているので、考えられない訴えだったが、電話がくるたびに遠くのホームに行かねばならず、著者は困った。ケアマネージャーに相談しても解決せず、その間にお姉さんの妄想は拡大を続け、電話は毎日のようにかかってくるようになった。

著者はどうしたものか、と頭を抱えた。

そしてふと気づいた。ホームでは習字や生け花、折り紙など、いろいろな趣味活動が行われていることに。

お姉さんの趣味は何だっただろう?と 著者は思い返し、答えに行きついた。

それは、読書だった。

でも、お姉さんは白内障をわずらい、長年本を読めなくなっていた。本もダメかと、あきらめかけた著者の脳裏にある光景が思い浮かんだ。

通っていた図書館の棚にあった、『大活字本シリーズ』だった。

大きな文字で、通常の本が読みにくい方でも読みやすくなっている『大活字本』。

これなら読めるかもしれないと、山本周五郎の『町奉行日記』を借りて、お姉さんの元へ届けた。

はじめて大活字本に出会ったお姉さんは、喜んで、拡大鏡をかざしながら読みはじめた。

それ以来、お姉さんからのSOSの電話は、ぴたりとやんだ、という。

私はあらためて、想像の世界を膨らますことができる活字の魅力、ほかの力を借りずともひとりで楽しめる読書の素晴らしさを確認した。習字や折り紙では止めることができなかった老化を、読書はいっときかもしれないが遅らせた。私は早く大活字本を読ませるべきであったと、臍(へそ)をかんだものである。街の図書館の書架での出会いがあったからこそで、知らなければ彼女に読書のチャンスをあたえなかったろう。

『図書館に通う 当世「公立無料貸本屋」事情』宮田 昇著 みすず書房 205ページ  ()はブログ主が付け足しました。

『大活字本』は2010年時点で、519の公共図書館で延べ26万7000冊が取り扱われている。(ウィキペディアより)

わたし
わたし

やっぱり、図書館は人を救う✨ もし、著者と同じ悩みをお持ちの方は、『大活字本』を、一度試してみては、いかがでしょうか?

無料貸本屋としての役割 日本の図書館の未来

著者が伝える、これからの図書館への要望とは? 例えば、

これから増える図書館利用者は、パソコンやスマホを使いこなせる世代なので、
◎リクエストが多い本については、文庫情報や電子書籍の発行もわかるようにする
 という、読書情報の提供
出版社は、近刊情報を図書館に知らし、図書館は、それらを書評を含めて利用者に開示する
 など、多種多様な価値観に応じることが大事だと訴える。
図書館は活字離れを防ぐ役割を果たしていることはあっても、活字離れを増やしている現実はない。
わたし
わたし

この著者の言葉。本当にその通りだと思います!!
上の2つの提案が実現したら、本を買う人もきっと増えるし! WIN WINの関係になりますね!!

アメリカでは、電子書籍を貸し出す図書館もあるそうで✨
詳しくは⇒サンアントニオ図書館

これからの日本の図書館が、いい方向に充実しますようにと、願います✨

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

コメント